あなたにあった歯の選び方について
人によって違う選択基準
あなたが虫歯で歯を削られた後、かぶせ物で銀歯、ゴールド、チタンの歯、プラスチックのCAD/CAM樹脂、セラミック、ジルコニア
いろいろとありますがかぶせ物はどれを選びますか?どれがいいのか?どうやって選べばいいのか?
- 保険がきくものから選びますか?
- 歯と同じ色のものを選びますか?
- とにかく丈夫なものを選びますか?
いろんな選び方があると思います。
かぶせ物、何を選択基準と考えるとよいのか
以前私の出したYoutube動画でもかぶせ物の材料説明をしています
でも自分が治してもらう時にはやはりどれが一番いいの?ってききたくなりませんか?
実際患者さんからのご質問はよくいただきます。
「先生はどのかぶせ物が一番お薦めなんですか?」
そうきかれた時の答えは、「何よりもまずあなたの口腔内で長期的に安定するものが最初のお薦めとなります。」と言っています。
入れた後ずっと長持ちしてくれるのがいいにきまってますから。
とはいうものの、その方のご要望や考え方予算はさまざまです。
とにかく値段重視で健康保険範囲を重視の人、それにとらわれずに、とにかく見た目重視の人など。
そこでいろいろあるその方のご要望をすべて天秤にかけて、ある意味妥協して決めていくことが臨床の現場では求められているわけです。
健康保険のモノが安全とは限らない
「とりあえず保険の範囲で治してください・・・」と言って、何が入れられるか説明もきかずに口を開ける方がいます。
でも、保険の範囲のかぶせ物が必ずしも安全とは限らないんです。
昔、アマルガムと言って水銀と銀や亜鉛をその場で混ぜて合金状にして詰めていくというアマルガム充填というのが昭和の30年40年のころには健康保険でさんざん行われていました。
水銀が良くないというのは現在わかっているので、もちろん今そんなものを入れてもいいという人は一人もいません。ただ当時は皆それを普通に入れている時期があったんです。ですので、健康保険がその時代に採用されたものが安心だと考えるのはやめた方が良いということです。
「虫歯で歯削られるのはもうこりごり、2度とならないようにしていただける方法でやってほしい・・・」とかなり無理を言う方、そうかと思えば
すでに過去、虫歯治療を沢山受けてこられていて、
「またできちゃいました・・・」とやり替えがルーティンになってる口腔ケアに無関心な方もいます。
「自分は金属アレルギーの心配があるので金属は絶対にダメです」というかたもいます。
化学物質過敏症の方の場合は金属でなく、樹脂などのプラスチックが皮膚や歯肉に触れると発赤してかゆくなりやすい特異体質の方もいるわけです。
自分の歯のダメになった本当の原因を考える
そこで、今回は皆様からのご要望の中でも
「自分の口には、どれが長持ちする歯か、その選び方はどうすればよいのか」をお伝えします。皆さんがご自分でかぶせ物を選ぶ際の考え方のご参考にしていただければ幸いです。
歯のかぶせ物を選ぶ際、一番最初にあなたがまず考えるべき事があります。
あなたのその歯が今回ダメになった本当の原因は何か、それをまず考えてほしいということです。
歯がだめになる理由にはいくつかあります。
実は、それは人によって異なるんです。
そこでその理由を考えて、その理由を考慮に入れた治療なら必然的に長持ちしやすくなるからです。
あなたの歯がだめになる理由は次の4つのどれかです。一緒に考えてみてください。
あなたの場合はどれでしょうか?
- 歯磨きの仕方や、歯並びが悪かったせいで磨き残しの部分が慢性的にできている人、もともと甘いものがすきでだらだら食いが多くいつも汚れている部分ができてしまっている方
- 硬いものが好きで噛む力が強い人、または歯ぎしりが強くある人
- すっぱいものや柑橘系のフルーツが好きな方、逆流性食道炎があり口の中が酸性に偏りがちな人、妊婦さんなどホルモンバランスの影響の出ている方
- 普段から歯がしみやすく知覚過敏が起きやすい歯の人
- 1が原因の方
一般的に虫歯になりやすいタイプの方
いわゆる一般的に虫歯になりやすいタイプの方には虫歯で治した際どんなかぶせ物が良いでしょうか。
このタイプの方が治したあと、長持ちさせたいなら、仮に磨きにくい磨き残しの部分があっても、治した部分にはなるべくプラークなどの付きにくい汚れにくい素材のほうがよい、ということになります。
それなら、第1選択は表面がなるべく汚れの付きにくい素材を選ぶのが正解となります。
汚れが付きにくい素材順で選ぶと、No1はジルコニア一択となります。表面性状がどの素材よりも安定していて、いつまでもつるつるだからです。
銀歯は汚れた環境では腐食する
金属も表面性状はつるつるですが、実はイオンの影響でプラークがよってきやすく、プラークコントロールのうまくできていない磨き残しのある人は金属かぶせ物は不向きなんです。
プラークが慢性的にたまった銀歯では、やがて金属腐食が発生して黒変して再度同じところがカリエスになるからです。例えば、しみると言ってお越しになった方がいらっしゃいました。
過去治された銀歯を外すと、歯茎に沿ってマージンの際の部分が全体的に腐食して黒変して再度虫歯になってしまっているのが確認されました。
このように一度治したところでも汚れが停滞した状態が長いと再度虫歯になってしまうわけです。
プラークでも腐食しにくい金属ならリスクが減る
金属でも、ゴールドやチタンなら腐食して酸化黒変しにくいのでそのリスクは減らせます。
また、全部かぶせられていない歯茎から離れた上の部分だけのかぶせ物なら汚れは停滞しにくく、プラークもつきにくいので、基本的には金属でもリスクは少ないのです。
プラークなどの汚れのつきにくいかぶせ物の順としては、ジルコニア・セラミック、ゴールド・チタンくらいまでです。
高強度レジンブロックCAD/CAM樹脂の歯は長期的には劣化しやすい
最近健康保険採用された歯と同じ色で人気の高強度レジンブロックCAD/CAM樹脂の歯は表面が多孔質でできているので、プラークは結構付きやすく経年変化で表面性状が劣化して粗造になってきて、細かい傷がつき、素材内部にも唾液中タンパクが浸透していくせいで、やがて黄ばんできます。
数年使い込んで、たまたま取れてきたハイブリッドレジンの樹脂のかぶせ物を再セットのためにレジンの部分を少し削ると腐食した嫌なにおいがします。
やはり樹脂内部に汚れが入り込んで劣化しているからそうなってしまうわけなんでしょう。
ですので、清潔な口腔ケアができていない方が、樹脂の歯は入れた時は、当初きれいでも経年的には劣化が進みやすく、プラークがついていなくても口臭の原因にもなる可能性があります。
高強度レジンブロックCAD/CAM樹脂は使うなら中期的に割り切りが必要
高強度レジンブロックで作られたcad/cam樹脂は最近健康保険がきくようになり、白い歯なので、これまで健康保険では銀歯が多かった方が目先これにのりかえたがる方が増えているのは事実です。
とはいへ、高強度レジンブロックは所詮樹脂なので、中期的な耐久性で、経年劣化したらまた保険で作り替えるといった考え方でいる必要があるでしょう。
劣化してきたら作り替えればよい、と割り切っている方は健康保険で目先白い歯ということで、高強度レジンブロックのCAD/CAM樹脂の歯でもよいというとになります。
但し、高強度レジンブロックの白い歯は健康保険がききますが強度を保つために一定の厚みが必要で、ジルコニアよりもたくさんご自分の歯質を削ることになります。
高強度レジンブロック樹脂の健康保険適用範囲と条件
ちなみにこの高強度レジンブロック樹脂の歯は、前歯から小臼歯まで適用され、大臼歯が上下4本全部そろった条件の方では、第1大臼歯でも使えるようになってきました。
一番奥歯の第2大臼歯だけはまだ適用外ですが、金属アレルギーの診断書がある方の場合は健康保険が認められています。
1が原因の方のかぶせ物の選択順は汚れが付きにくい素材順に選ぶのが正解と考えればよく、その順に
- ジルコニア
- セラミック
- ゴールド
- チタン
- CAD/CAM樹脂
- 銀歯
改心して口腔ケアも今後しっかりとするという前提なら、予算的に自費の歯はきびしいという方は健康保険で採用されているCAD/CAM樹脂の歯を妥協して入れます。そして最後に銀歯といった順になります。
2が原因で虫歯になった方のかぶせ物素材
昔から硬いものが好き、歯軋りが強いなどで歯が欠けたりすりへったりしてしまう方。
顎がしっかりとしていてえらが張っていたり、顎の噛む力もかなり強い方が多いです。
そのせいで、かけたりヒビがはいったところがだんだん大きくなり、ついにしみるようになってきたという人です。
そういう人の場合はそもそも治したところが再度歯ぎしりや硬いものを噛んでも壊れないようにしないと長持ちしません。
金属は咬合の耐久性は抜群だが
正解は金属で、ゴールドか保険の銀歯・チタンの歯が答えとなります。どうしても白い歯でという方はジルコニアとなります。セラミッは欠けてしまう危険があるので特に奥歯には適していません。
正解は
①ゴールド②チタン③銀歯④ジルコニア⑤CAD/CAM樹脂⑥セラミック
ただ硬ければ正解というわけではない
もしジルコニアを入れた場合には1年に1回くらいは全体の歯のすり減り具合を調べて、その歯だけ強く当たりすぎていないか調べてもらうといったチェクが必要となります。
歯ぎしりの強い方などは、長い間に他の部分だけすり減ってきて知らないうちに入れたジルコニアのかぶせ物だけ相対的に強く当たるようになってしまう危険があるからです。
また、高強度レジンブロックCAD/CAM系の樹脂の場合には、経年変化でジルコニアとは逆に、すり減りすぎてしまい、そこだけへった噛みにくい状態になってしまうことがあります。
そうなった場合には再度壊してかぶせ物の作りなおしが必要となってきます。
なぜゴールドが昔からかぶせ物として重宝されているのか
どの歯がすり減るとか、すり減らなかったなどをいちいち気にしなくしたいなら、ゴールドが一番となります。
ゴールドは適度な硬さで大体自分の歯と同じくらいの速さですり減っていってくれるので調整は基本的に不要だからです。
なぜ昔から歯科医が自分の口の治療にはゴールドを入れることが多かったのかというと、
- そもそも削られる歯の量が金属で強度があり少なくて済むからです。
- 適合精度がすべての素材の中で一番良い
- 適度な硬さと粘りがあり、経年変化で周りの歯と同じ程度にすり減ってくれて、かみ合わせが長期的になじみやすい
- 金属の場合には実際に鋳込んで作るので細かい形態を歯科技工士が再現しやすい
- 適度な縁端強度があって辺縁がかけにくい
- いわゆる貴金属なので酸化黒変しにくい
など利点がたくさんあるからなんです。
欠点は歯と同じ色でないということだけです。
実際私の口の下の奥歯には、当時虫歯ではなかったのですが、かみあわせの高さ全体が低かったために全体の高さを補正するために左右小臼歯と大臼歯に8本のゴールドのハーフクラウンという、歯に半分だけかぶせるかぶせ物がはりつけてあります。
入れてからもう40年以上たちますが、いまだトラブルなく機能し続けています。
当時はそもそもジルコニアという白くて丈夫な材料がなかったのでゴールドにしたわけです。今なら見た目も大切なのでジルコニアにしたかもしれません。
3番目が原因の方のかぶせ物素材
普段からすっぱいものが好きで、具体的にはレモンや、グレープフルーツなどの柑橘類がやたら好きな人、ないしは逆流性食道炎で夜間胸やけや胃液がこみあげてきやすく口腔内の唾液の性状が酸性に傾きやすい傾向にある人です。
こういった方の場合、歯が化学的に酸性に傾きやすい唾液の性状で表面が溶けて虫歯になったのが主な原因と考えられます。
こうした人の、かぶせ物の正解は、化学的に安定なジルコニア、セラミックの歯が正解です。
金属や樹脂はNGです。金属は酸に腐食しやすく、プラスチック系の樹脂の歯も安定せず溶けやすいからです。
以前アロマ系のハーブ入りの歯磨材などをヘビーにお使いの方がいて、その中のアロマ成分の精油と反応して樹脂の表面がやたら溶けてざらざらになってしまった方がいました。
樹脂の歯を入れた後、あまりに早期に劣化が認められたので変に思い、その原因がわからずいろいろと患者さんに詳しく伺っていたところ、外国製のかなり高濃度のアロマオイルのはいったハーブ系の歯磨剤を毎日お使いだということが分かったんです。
すぐにその使用を控えてもらうようにしてから劣化が止まって解決したことがありました。
この教訓から、レジン樹脂などのプラスチック系も化学的には決して安定していないのだということになります。
よって正解3番目の口の方は ①ジルコニア②セラミックのみとなります
4番目の知覚過敏が起きやすい方のかぶせ物素材
そもそも歯を削られる量を極力少なくした方が良いので、正解はゴールドか健康保険の銀歯かチタンの歯となります。
金属なら薄くて済み、削られる歯質の量が一番少なくて済むからです。
金属はどうしてもいやだという場合には、金属の次に削られる量が少なくてすむジルコニアを選ばれるのが無難です。
正解は①ゴールド②チタン③銀歯④ジルコニア
このタイプの方にCAD/CAM樹脂の歯はNG
先ほどからよく登場してくる最近健康保険で奥歯でも白い歯が入れられるようになった高強度レジンブロック樹脂で作られる歯は、歯と同じ色で手軽に希望される方が増えてはいますが、4番目の歯の方がCAD・CAM樹脂の歯を入れると悲劇がおこることがたまにあります。
樹脂のレジンの強度を保つ厚みを確保するために逆にご自分の歯をたくさん削る必要があるからです。
ただでもしみやすい歯が、歯髄に近いところまでたくさん歯が削られることになります。
結果的にかぶせ物がきれいに入って虫歯は治ったと思っていたのに、以前よりしみやすくなり、治るどころかしみるのがひどくなってしまうことが多々あるからです。
ただでもしみやすい歯の方が、治療後したのにもっとしみやすい状態となることがよくあり、最終的には神経をとられる治療になります。
実際、高強度レジンブロックのCAD/CAM冠を入れられた後、見た目は一見きれいに治っているにもかかわらず、しみるのがずっと続いて気になる・・・ということで当院にお越しになって、残念ながら結局神経をとる治療をされた方は何人もいらっしゃいます。
最終的には人によって条件が複合的
いかがでしたか?
実際には、以上の4通りの要因以外に、これらの理由がが複数重なり合っていることが多いので素材を選ぶのは人によってさらに異なってくるということになるわけです。
例えば歯軋りもつよくて、金属アレルギーが心配で見た目的にも白い歯が希望の方の場合には、ジルコニアか、CAD/CAMのハイブリッドタイプの歯でしょうが、さらに歯を削られる量をなるべく少なくしてほしいと希望される場合にはジルコニアだけに絞られることになります。
これでお分かりいただけたと思いますが、もし、薄くても強度的にも金属と同様の粘りとかけにくさがあって、適度な硬さで自分の歯と同じようにすり減ってくれてしかも歯と同じ白い色で化学的にも安定している素材が今後登場した場合には、それがオールマイティということになりますが、いまのところまだそんな素材は残念ながらないようです。
結局のところ、自分の歯が一番いいにきまってる・・・ということが結論となります。
ですので、これ以上虫歯を増やして歯を削られることのないように、日ごろからの口腔ケアをしっかりと心がけていきましょう。
歯の治療は、一般的な内科治療などと少し違いがあります。それは「同じ箇所の治療でも、やり方がたくさんある」ということ。例えば、1つの虫歯を治すだけでも「治療方法」「使う材料」「制作方法」がたくさんあります。選択を誤ると、思わぬ苦労や想像していなかった悩みを抱えてしまうことも、少なくありません。
当院では、みなさまに安心と満足の生活を得て頂くことを目標に、皆様の立場に立った治療を心がけています。お気軽にお越し下さい。