かみ合わせや歯並びを治すなら子どもの時
一般的には、大人になって社会に出るころになってから、ご自分のかみ合わせの悪さや歯並びの悪さに気づかれる場合が多いです。
そのころですと、本格矯正の際に親知らず以外になんでもない自分の歯を抜いて治療せねばならないことが多くなります。
また装置を入れている間の違和感や見た目の悪さを子供のころ以上に気にする機会がふえてきてしまいます。
もし、歯列が完全に完成する以前、つまり子どもの頃に対処ができていれば大きく良くなります。
具体的には、歯の植わっている上顎と下顎をアーチ全体でサポートしてやることができれば
- 歯が生えそろったころに本格矯正をしないですむ可能性が高まる
- もし矯正をするとしても、親知らず以外の自分の歯を余分にまびいて抜歯しないで短期間の矯正期間ですむ可能性が高まる
のです。
しかも、子供のころは口腔内に多少の異物感があっても、大人に比べて非常に慣れるのがはやく、さほど苦にしないで装置を入れておいてくれるものです。
また、この時期にする矯正装置は表面からつける装置とは異なり、装着していてもまわりから気づかれることはほとんどありません。
調整の時期も1-3ヶ月に1度か2度ですみますので、費用的にも少なくてすみます。
乳歯がすべて生えかわり永久歯だけになった時にある程度満足するアーチができあがったところで、第一段階の治療期間が終了します。
このあと、さらにきちっとしたかみ合わせにする必要があるかないか状態に応じて決定していきます。
必要な場合には歯の表面につけるブラケットという装置で、本格矯正治療を続けていくかどうか判断してすすめます。
ご両親がお子さんの歯並びを、早いうちにいかに注意をはらって見ていてあげられるか否かにかかっています。
ご自身の歯並びがあまりよくなかった場合や、乳歯の時期に明らかに変な方向に歯が生えてきたように感じられるのならば、一度ご相談されると
次のページにあげた実際の例をご覧になってください。
来院されるきっかけはご両親であっても、決心されるのはお子様ご本人です。
不定愁訴、集中力散漫、顎の倦怠感、頭重感、見た目の悪さ…等々かみ合わせの悪さは、その後のその人の生き方すらかえてしまうことになりかねません。
咬合発育誘導では、歯の表面につけるブラケットという一般的な矯正装置はつけません。
内側の大臼歯にバンドを付けてそのバンドに舌側弧線でできた、3Dリンガル装置、3Dクワドへリックス装置、という自分では取り外しができない歯列拡大と保全を兼ねた装置を主に使います。
また、場合によっては、発育を正常咬合に持って行ってやるために咬合高径を変える目的で、意図的に咬合面にレジンなどの硬い素材でかさ上げする方法なども併用されます。
治療例
上顎3Dリンガル装置の治療例(初診時11歳男子)
10ヶ月後
2年後
初診時11歳男子の例で、歯並びを気にされて来院されました。乳歯臼歯がまだありますが、全体の歯列は上顎のみ特に乱れておりましたので、上顎に対してのみ、3Dリンガルアプライアンスを第1大臼歯にバンドをセットして装着しました。
毎月1回の来院で2年後の同じ男子の状態が、一番下の状態です。(この間に乳歯が永久歯と完全に交換し終わり歯列の保全がなされました。)
この時期にて一旦装置をはずして上顎第2大臼歯が萌出するのを待ってその時期がきたら次に第2期の矯正装置(フルブラケット)を歯につけて最終的に歯軸のコントロールをして仕上げることになります。場合によってはこの第一期治療のみで終了するケースもあります。
上顎3Dリンガル装置の治療例(初診時9歳女子)
10ヶ月後
1年3ヶ月後
このように矯正装置が表から見えることなく、混合歯列期のアーチを保全していきながら永久歯への生え変わりのスペースを確保していくことで上下顎の噛みあわせを育成していく方法が咬合発育誘導の考え方です。
場合によってはレジンキャップを乳歯につけてやり、咬合高径のコントロールのみで顎位を保全していく方法がとられる場合もあります。