歯周病が起きる原因を正しくご存じですか?
歯周病とはなぜ起こるのでしょうか。
口の中が炎症を起こして、なんとなく口の中が悪くなっていく…と漠然としたイメージをもたれがちですが、一言で言えば「細菌感染症」です。
ではその細菌がいるのはどこかというと「プラーク」と呼ばれる歯や歯茎の周りに付着しているねばねばした部分です。
下の写真は、そのプラークの中にいる代表的な細菌の電子顕微鏡写真です。
これらの細菌の出す毒素が歯周組織をどんどん破壊していきます。
破壊されるにつれて歯肉の下の歯槽骨が溶かされてだんだんなくなっていきますが、慢性的に進行するためにかなり進まないと自覚症状が出にくい点が要注意です。
そのため、歯周病は「沈黙の病」と言われ、国民の成人の8割以上が程度の差こそあれ何らかの形で歯周病になっていると言われています。
初期の歯周病はこうして治していきます
1.初診時の状態
歯肉のプクっとした状態に注意。
全体的に黒いあかみが強く歯ブラシなどでこすると、すぐに出血してきます。また白っぽいプラークで歯の間が見えません。
2.ブラッシング指導後
ブラッシングの徹底だけで歯間のプラークが取れて歯肉の腫れが回復してきた状態。
(上と同じ人)この時点でそれまで腫れていた歯肉で見えなかった茶色っぽい歯石がはっきりとみえてきています。
こうすることで歯石がきれいにとりやすくなり歯肉の炎症もおさまってきます。ブラッシングなんか毎日やっている…と思われていても、実際には磨けていない方が多いのが実情です。
3.歯石を除去後
歯石を除去してさらに歯肉の状態が引き締まってきて、歯肉もうっ血状態でなく健康状態を取り戻してきているのがわかります。
歯周病には4つの悪化ステージがあります
健常者の歯肉と歯
ここから、汚れた状態を放置しておくと歯と歯肉の間から入った細菌(歯垢や歯石)が歯肉に炎症を引き起こすと歯肉は赤く腫れ出血しやすくなり始めます。
初期の歯肉炎
細菌が歯と歯肉の境目からわりこみ、歯と歯肉を離れさせはじめます。いわゆる歯周ポケットができ始めます。
中等度歯肉炎
歯と歯肉の境目に付着した細菌が歯の根に沿って根の先に侵入し、繁殖して口臭なども発するようになります。さらに支えている歯槽骨を溶かしてしまい、ポケットからは常時血や膿がにじみ出てくるようになり頻繁に腫れやすくなります。
重度歯肉炎
歯肉はやせて下がり、歯槽骨はほとんど吸収されてなくなるので、歯槽骨がむき出しになってくる。
ついにはぐらぐらになり動揺して歯本体が自然と抜け落ちてしまうことになる。
治療の流れ
ご自分の口腔内の現状がどのステージに属するのかをはっきりとご認識いただく必要があります。
皆様のお口に存在する何らかの主訴を伺った後、まず、初めて当院におこしの方の場合にはその方の口腔内の状態が全く分からないので状態把握のために、まず検査(全部あるいは一部)をいたします。
その後は健康保険での歯科治療は歯石とりがメインの治療となります
■一般的な流れ
- パノラマレントゲン撮影(場合によってはデンタルレントゲンも併用)
- 歯周ポケット検査、動揺検査、出血傾向検査
- 口腔内の歯周病菌を目で見ていただくための位相差顕微鏡検査
- ブラッシングや周辺器具の当て方や使い方のご説明
- 歯石除去とご自身でのホームケアの仕方等についてのアドバイス
除菌治療(自費)もお勧めです。
パーフェクトペリオという、白血球と同じ殺菌成分であるHClO(次亜塩素酸)とバイオフィルムの破壊効果のあるNaHCO3(炭酸水素ナトリウム)が含まれた電解水を使った除菌治療があります。
パーフェクトペリオを使うと
- 歯周病菌を守っているバイオフィルという膜を破壊し、細菌を破裂させられる
- これまでの抗生物質や酸性洗口剤を使ったやり方と違い、体に害がない
と、普通の治療よりとても効果の高い除菌が可能です。
保険外・自費になりますが、おすすめの治療法です。お気軽にご相談下さい。
除菌+レーザー併用治療について
- 吐く息のなかに含まれている口臭の成分を検査します
ガスクロマトグラフによるVSC(揮発性硫黄化合物)口臭検査、バナペリオ試験紙による歯周病原菌検出検査(場合によっては位相差顕微鏡検査も実施します) - オーラルクロマによる歯周病菌の判断
口臭の原因となる3つのガス、(1)硫化水素(2)メチルメルカプタン、(3)ジメチルサルファイドのガス濃度を測定し、口臭原因の特定や、特にその主要原因である歯周病の診断 - 次亜塩素酸水を歯周ポケットに注入し治療
高濃度(600ppm)活性化次亜塩素酸水を歯周ポケットに注入しながら除菌をしながらプラークと歯石、バイオフィルムを取り除きつつ歯周ポケットのイリゲーション、溶菌リンパ球、マクロファージ活性化阻止 - 繰り返します
程度によって数回行います(1回約45-60分)
基本的にはさほど痛い治療ではありませんが、敏感な方は表面麻酔をしてから行うこともあります。600PPMの高濃度活性化次亜塩素酸水は結構辛いのでが、バキュームにてどんどん吸い取りながら歯周ポケットの中を洗浄していきます。
一般的に、健康保険で歯石をとったりする際に歯茎から出血しますが、その時に歯周病菌が一緒に血管内に侵入して一過性の菌血症を引き起こすことが知られています。
それをこのように除菌しながら治療を遂行することで、そういった心配を回避することができるもう一つのメリットがあります
同時に必要に応じて、歯肉縁下の硬い黒い歯石をエルビウムヤグレーザーにより取り除いてきます。
なお、レーザーによる歯肉縁下の単独除石治療は程度部位により1本3-6千円です。除菌治療がすんだ後にも見つかった場合には単独で行うことがあります。
重度の場合は数回同じことを繰り返しますがすべて数回以内で終了します。
なお、歯周病の程度により、その後は半年に1回とか、1年に1回程度の除菌を診療室で定期的におこない続けることで口腔内の歯周病菌の絶対量を低いレヴェルで抑え込むことができ、メインテナンス期間の歯周安定性が可能となります。