トータルによい状態になるように治療するためには、様々な方法を必要に応じて取捨選択し、治療を進める事が必要です。様々な方面とは、矯正治療、歯周治療、インプラント手術、補綴治療などです。
長期的に良い状態を作り出すためには、目の前の事象だけではなく、全体を見て総合的に判断・検査して治療計画を立てる必要があります。
例えばかぶせ物です。
かぶせ物のやり直し時期が来ている際、ずれが生じてきていることが多いです。しかし、そのずれをそのままにした状態でかぶせ物だけを取り替えても、顎のずれは口の中に残されたままになってしまいます。
しっかりと、長期的に安定した噛み合わせを保てる状態を維持していくには、
- 現状のずれの状態を把握するために顎機能精密検査をまずおこなって
- 問題点が見つかった場合にはそれを治すために、矯正治療をしたり、現在かぶせてある歯を一度壊してまず仮の歯にして、その状態でずれを調節してその後にしっかりとしたかぶせ物をいれていく
必要があります。
歯並びや噛み合わせの修正を必要に応じて矯正治療、または仮歯に置き換える治療を施して進めていきます。
仮の歯はプラスティックでできていますので、つけたし削りこみが自由自在です。この性質を利用して最終的には顎の最も動きやすい位置、噛みやすい位置を探し出していきます。
もともとはえてきている歯の位置が悪い人の場合には矯正を先に行って、ある程度ご自分の歯の位置をいいところにもってきておいてから、仮の歯におきかえる治療をするほうが審美的にも生体にとっても有利なことが多いようです。
このように、長期的に良い状態を作り出すためには、目の前の事象だけではなく、全体を見て総合的に判断して治療計画を立てる必要があります。
そのため、現状を把握するための検査も必要です。
総合治療の流れ
全体的に治療をご希望の方に関しましては、効果的な治療をどうしたらすすめていけるか、現状を把握して治療方針の決定をさせていただいております。
その際治療にさきだって現状を正確に把握するための顎機能精密検査(8万円)を行わせていただいております。
その際、パノラマレントゲン撮影と、歯周ポケット検査、模型採得に関しましては保険治療の範囲内で受診できますが、以下の検査に関しましては、保険がききかないため、自費扱いとなっておりますのでなにとぞご了承のほどお願いいたします。
自費扱いとなる精密検査
- セファロレントゲン撮影(頭部X線規格写真)
- 口腔内写真
- 顎関節レントゲン撮影(顎関節X線規格写真)
- コンピューターによる顎関節運動記録(CADIAX、オーストリーGamma社製)
- 模型の咬合器診断
- 夜間ブラキシズムチェッカー
当医院にて採用している顎機能運動咬合診断総合プログラムは、ウイーン大学の名誉教授R.スラヴィチェック博士らの咬合理論(咬合は生体に調和したものでなければならない)と、神奈川歯科大学の佐藤貞雄名誉教授にもとづいて開発されたものです.
このシステムにより得られたデータ解析することで、患者さん一人一人のもっている骨格形態にあった補綴物を熟練した技工士さんとの連携でつくりあげていくことになります。
なお以上のデータをもとに可能性として考えられる治療方針を私共が決定してご提案いたします。
それにもとづき、患者様と検討してはじめて、治療が開始されることになります。
しっかりとした診療開始までの一連のながれについては以下の通りです。
- 初診日受付
- 治療の方針についての概略の説明
- 顎機能精密検査
- 検査報告と治療方針ご提示
- 治療開始
なお、治療前に応急処置が必要な場合には適宜保険治療の範囲内で一時的に対応しておきます。
保険治療を予定されている方へ
顎機能精密検査は主に全顎自費治療を予定されている方のためのプログラムです。
ですが、予算的に健康保険でのかぶせ物を予定されている方でも、現状のずれを調べたい方は顎機能精密検査を受けられてから、治療料金なども含めたご自分の口腔内の治療プランを担当の先生と相談しながら進めていく事をお勧め致します。
治療例
次にあげるのは、審美的に見栄えが悪いので何とかしてほしいということで、当医院に来院されました患者さんの例です。
この方の問題点は…
- 前歯の間につめられているコンポジットレジンという詰め物の変色
コンポジットレジンという歯へのつめものは健康保険がきく材料ですが、プラスティックでできているために、長期的にすき間が黒ずんできたり変色したりしております。さらにはその範囲が広範囲におよんでいるためにつめなおしがきかないので神経をとって全部削ってからかぶせものにするしか方法がないのがわかります - 側切歯(前から2番目の歯)にレジン前装冠が入っていて歯茎が黒ずんでいて不自然になっています
- 下顎の前歯は歯並びが悪いために歯茎が歯槽膿漏になって腫れています
- 小臼歯が銀歯であるために笑ったときに銀歯が見えてしまい審美的でありません
- 歯並びが悪いために顎の動きに調和した負担の軽い歯のあたり方ができないために、干渉となる奥歯が多くなり、結果的に虫歯になって治療されてしまっている歯が多いようです
咬合のバランスを考えて総合治療をされた例
症例報告先:顎口腔系再構成治療への最近の考え方 (ローアングルクラスIII症例を通じて)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jacd1999/26/1-2/26_1-2_62/_article/-char/ja/
治療前(初診時の状態)
奥歯をいくら治しても噛み合わせが悪く、見た目の悪さも改善したい、と来院された方の治療例です。顎機能精密検査後に歯周治療、矯正治療を行い咬合状態の補正を行った後、健康保険の銀歯をすべて取り除き、補綴治療としてセラミックのかぶせ物に置き換え、さらにホワイトニング処置を施された例です。
矯正治療中(マルチループエッジワイズ法)
補綴治療後(矯正治療から最終補綴までの治療期間 約1年半)
このように、初診時の状態から治療終了後を比べて頂くと、全体的に正常で健康的な咬合状態へ改善されているのがおわかりいただけることと思います。
この方は現在は定期的な口腔ケアメンテナンスだけで通院されており、術後15年たった今でも安定経過しています。
図は終了後の上下の歯の噛み合わせを石膏模型にしたものです。
下の歯が上の歯にかみこんで、そこで歯ぎしりなどを行う際に、このようにきれいな歯並びになることで、スムーズな歯ぎしりや食事が行えるようになります。
結果的に各歯牙にかかる負担がかからず、軽い動きで効率よく食事ができることになります。
この総合治療を受けられた患者さんの言葉を借りるなら、以前よりずっと食べやすく効率的に食事ができるようになったとのことです。
審美的であることと、機能的であること両方を満足させるのが総合歯科治療で、これを解決させるためには術前に先に挙げた顎機能精密検査が必要となります。
いつも同じところばかりだめになるとか、かみにくい、とか顎が疲れやすい、などの根本原因には実は咬合のひずみが隠れていて、それを解決できていないことで多くの問題が引き起こされている例が臨床上かなりの数にのぼります。
- 歯並びの悪い方
- 顎の開け閉めをする際、痛かったり違和感が強くある方
- 限局性の歯周病を抱えている方
- 同じ場所だけいつも調子が悪い方
- 奥歯ばかり治されている方
- 前歯ばかり治されている方
- 強い知覚過敏の歯がある方
- 肩こりや体のバランスが悪い方
- かた噛みでいつも使う歯が決まっている方
- 難聴気味の方
- 両側の奥歯で違和感なく強くかみしめることのできる力が入らない方
総合医療はどうしても自費治療でしか実現できません
原因を調べてからひずみを取る矯正治療や補綴治療を受けて長期的に安定させていく総合治療はすべて自費治療となります。
もし、本質的な治療は時間的にも費用的にも無理という方の場合には、現状の症状を悪化させないために、せめて対症療法的に対応していく必要があります。
マウスピースなどのスプリントを夜間お口の中に入れていただき、せめて歯の動きを干渉しないように逃がしてやるといったことや、昼間のくいしばりや無意識のかみしめなどの癖を各自気を付けていただく、といったことをしていただくことがあります。
人生100年時代と呼ばれるようになってくると、ごまかしのその場治療でしのいでいても、結局またやりかえる必要が生じてきてその時はもっと大きく治療をしなくてはならないことの繰り返しとなることが多くなります。
そして、最終的にはやりかえがきかずに抜歯にまで至るという残念な結果が待っています。
最初からしっかりとした総合治療をして長期的に安定した状態を保てるようにしておくということは、その人にとっては歯を失わないための一番良い選択です。
人生は一度きりですから、もし本当にしっかりと治そうと思われるなら、思い立った時にはじめられるのが一番と考えます。
また、こうした機能的な問題の解決のために、成人矯正も最近増える傾向にあります。
私どもの診療所ではこういった前向きの考えをもって総合的な治療に望まれる方に対応できるようにするために、新しい治療技術をご提供できるように世界中の数多くの学会や講演会からの情報を得ることでたえず研鑚と新技術への取り組みを続けております。