かぶせ物には保険内で入れられる物と自費の物があると言うことは、恐らくご存じでいらっしゃるかと思います。
場所や状態にも寄りますが、基本的には保険内の場合一部の例外ケースを除いて銀歯となります。
例外というのは、下顎の第一大臼歯、そして上下の小臼歯のみ、健康保険でいれても銀歯ではなく高強度レジンブロックでできたCAD/CAM冠が入れられるようになりました。
※ただし下顎の第一大臼歯に健康保険のレジンブロック製CAD/CAM冠を入れることのできる条件は、上下ともに28本歯が存在ていていて咬合が安定している方、もしくはお医者さんから金属アレルギー疾患である旨の証明書がある方ということになっています。
しかし他の歯の場合はやはり銀歯です。
保険内の銀歯と、保険外の歯の費用差は?
価格が安ければ、誰しも白い歯にしたいと思いますよね。ただやはり保険内徒歩圏外ですとかなりの費用差があります。
具体的には
- 健康保険で大臼歯に銀歯を入れる場合1129点(2018年6月現在)となるので11,290円のうち窓口負担金を3割としますと約3,500円くらいとなります。
- 自費のジルコニアやファインセラミックのかぶせものを入れようとすると、同じ窓口負担金と比べて45倍近く支払うことになります。
この差は、非常に悩ましい物だと思います。
素材選びは基本的には、ご本人に決めていただく以外に方法はない。なので、最初に保険にしますか、自費にしますかという選択を迫られることになります。
ご自身のお口の環境が虫歯になりやすいのかそうでないのかリスクを知って、その上でかぶせ物を選択することが重要です。
ちなみに、歯科医師としてはやはり銀歯は避けたいと考えています。例えば、身内が虫歯になったら、私たちは高くても保険外を入れるようにお勧めします。
銀歯をお勧めしない理由
理由1. 銀歯は再治療になる可能性が高い
奥歯は磨き残しがどなたも結構でる部分です。
これまでにも「あなたにとって、歯の一番磨けていない場所は?」や「間違いだらけの歯ブラシ選び」などでも書いたので覚えておいでの方もいらっしゃると思います。
プラークが停滞している場所に銀歯があると、「コヒーラ現象」という物がおき、酸化腐食が発生しやすくなります。そして、そこから二次う蝕が発生しやすくなるのです。
結果的に銀歯をいずれ再治療しなくてはならない必要が生じます。
その際には以前よりもダメになったところができているために、自分の歯をさらに削り取られることになります。繰り返せばいずれ歯がなくなってしまい、抜歯に至ります。
また、酸化黒変してしまった部分は人体に有害で、金属アレルギーの原因にもなることも知られています。
理由2.金属は口臭の原因になりやすい
金属イオンの影響で、銀歯の周りにはプラークがたまりやすくなります。結果かぶせ物のキワの部分は、絶えず汚れが停滞しやすい環境になります。
また金属イオンの影響も重なり、嫌気性菌優位な環境ができてしまいます。
そのために銀歯のキワの部分は、歯周病の悪玉菌の一つである「グラム陰性菌」の格好のすみかとなってしまい、結果的に歯周病や口臭の大きな原因となります。
しかもその部分は皆さんが歯磨きをする際に一番苦手とされる歯茎と歯のキワの部分であることからさらにたちが悪いのですね。
実際の写真でご覧に入れましょう。もともとキワみがきができていない方の奥歯の状態です。
理由3.銀歯の周りにはプラークが付きやすい
プラークの下は二次う蝕 上の写真は銀歯と歯の境い目に堆積しているプラークで全体的に白っぽく見えているのがおわかりいただけると思います。
そのプラークをこそげた下の写真では、酸化腐食して二次う蝕になってしまった黒い歯質が観察されます。
しみるということで来院されましたが銀歯のキワに沿って黒変した二次う蝕が見られます。
次の写真はその銀歯を外してみたところです。
銀歯と自分の歯の境い目がそれに沿って酸化黒変してしまっているのが観察されます。
やり替えの際にはこうした酸化黒変してしまった歯質をさらに大きく削りなおしたのちに、前より一回り大きなかぶせ物が入れられていくことになります。
その際も同じ銀歯を使うと、結局何年かしてまた同じことの繰り返しになる。なので、最終的にはやり直しがきかなくなり抜歯されてしまう。なので、歯の寿命を縮めます。
できれば最初から銀歯を使わずに長持ちさせたいわけです。
保険外治療での「ジルコニア」のメリット
抜群な生体親和性を持つ「ジルコニアファインセラミック」は、以下の5つのメリットが注目すべき点です。
- 金属のように酸化腐食して黒変せず長期的に安定し、アレルギーの心配がない上に口臭の原因とならない
- 表面にプラークがつきにくいので他の素材より清潔に保ちやすい
- 歯と同じ色でプラスチックのように黄ばんだり着色しないので永遠に審美的
- 鋳込んで作る金属のかぶせ物より適合精度が優れている
- 耐久性がセラミックの15倍の強度なので破折や摩耗がしにくい
表面がつるつるでプラークを寄せつけず、いつまでも清潔で歯と同じ白くてしかも耐久性のあるジルコニアやセラミックなどのメタルフリーな素材で治すのが、歯科医師としてはやはりお勧めとなります。
保険外なのでどうしても費用はかかってしまうのですが…。
最後に決めるのは皆様ですが、安易に銀歯にすることだけは避けて、銀歯にする場合はお手入れをとにかくしっかりしなければならないことを、気をつけて頂ければと思います。
歯の治療は、一般的な内科治療などと少し違いがあります。それは「同じ箇所の治療でも、やり方がたくさんある」ということ。例えば、1つの虫歯を治すだけでも「治療方法」「使う材料」「制作方法」がたくさんあります。選択を誤ると、思わぬ苦労や想像していなかった悩みを抱えてしまうことも、少なくありません。
当院では、みなさまに安心と満足の生活を得て頂くことを目標に、皆様の立場に立った治療を心がけています。お気軽にお越し下さい。