歯のクリーニングはどういった場合に健康保険でしてもらえるのか。予防治療が重要だと言われる中、そして歯こそ定期的なメンテナンスが重要な今、悩ましい問題です。
症状もないのにただチェックだとか、診る、という行為が健康保険治療の中にあるのかというとありません。
現行の保険制度ではメンテナンスに保険は使えません
現行の健康保険制度では、以下のような流れですべての作業が成立っています。
何らかの症状がある → 調べる → 診断で病名がつく → 治療が始まる
という流れです。
「現状何でもないのですがおかしいところがないかチェックしてもらえませんか?」という方や「うちの子供に虫歯がないか心配なので先生の目で一度しっかりと診てもらえませんか」という熱心なご両親もおいでになりますが、厳密に考えると保険が使えなくなってしまいます。素晴らしいことなのですが…。
グレーゾーンだが「疑い病名」で保険は使える、だけれど診断だけ
実際そういったグレーゾーンの例はかなり多いのですが、この場合は、「C(虫歯)の疑い」とか「P(歯周病)の疑い」とかの「疑い病名」がつけられます。
これがあるおかげで、すべて自費扱いにらずに健康保険が使えて初診料だけの算定ですんでいるのです。ただし、診断までで終わりです。治療はありません。例えば、簡単な表面の汚れやステインなどを取ることは、健康保険ではできないことになります。
違和感のチェックも、診断病名がつけられれば保険対応
またちょっと変わった別の例では、「先生、なんか奥歯のあたりに違和感があり、たまに痛む気がするのですが、診てもらえませんか?」この場合にもいろいろと調べた結果やはり現状問題なしということがわかって治療もしないことになった場合でも、「原因不明の疼痛」といった診断病名がつけられるので自費扱いとはならずに初診料だけで済んでいます。
悪しき慣習としての「軽度の歯周病」という病名
そうはいっても、せっかく来られた患者さんから
「クリーニングも何も今日はしてくれないんですか?」と言われてしまえば、「何でもないようですが、汚れもついているということですので(とりあえず本当はそうでなくても軽度の歯周病の病名をつけて)一応衛生士さんに汚れを取ってもらいますね…」
これが健康保険を使ってしまう一番多い健診兼クリーニングという悪しき慣習の一つと言えました。
ただし本当に歯周病が大きく進んでいる方は基本的には治癒して治療が終了、という概念はない。なので、永遠に歯周ポケットの定期的な洗浄とクリーニングが必要となるために、1から3か月おきにクリーニングと称して歯周病管理を健康保険ですることになっています。歯周病安定期治療(SPT)という項目がそれです。
歯科以外の医科では明確にNG
医科の分野では、健診の考え方には歯科のようにあいまいな考え方はありません。要するに体のどこかにおかしいところがないか調べてほしければ自費で人間ドックに行って受診するのが当然だからです。
たとえば、医科の診療所に行って、にこにこしながら、「先生、初めてなんですが私にどこかおかしいところがないか調べて診てください」という方がもし来られたとすれば、別の意味でそこの先生はきっと「この人おかしいな」と思われるかもしれないですから。
最近は歯科ドックというものも
最近は医科の人間ドックに似せて、歯科ドックなる、検査だけを自費で行う診療所も増えてきたようです。確定診断をしっかりとつけるためにはお口全体のレントゲンも必要ですし、唾液の中の細菌の数や唾液の出る量、はたまた、歯周病菌DNA検査なども調べる必要があります。要するに検査はあくまで診断をつけるまでの前段階で、本来病名がつかない限り健康保険治療で突然口をあけて何かを始めるということはあり得ないということになります。
自治体も無料の歯科検診をやっています
各自治体がこうした流れを勘案して、一般の方にも無料で健診してもらえるように、医科や歯科の無料健診制度が毎年実施されているのをご存知でしょうか。何でもないけどどこかおかしくなっていないか診てもらうことへの助成という位置づけになります。
国分寺市でも毎年6月から半年間、成人を対象にそういった健診期間が設けられています。
※各自治体によってこの辺の期間は様々ですのでご自身の住民票のある地区のWebページの健康推進課などのところをご覧になれば載っています。
個人あてに郵便を送ってくれる裕福な自治体はいいのですが、残念ながら国分寺市の場合は、40代、50代といった節目の人にしか個人あての健診通知はがきが届きません。
したがってあなたも普段から市報をよく読む習慣とかがないと、結構知らないでやりすごしてしまうかもしれませんね。住民税を払っている成人の方は当然無料の権利です。なので、年に1回の健診は受けないと損をしますよ。
時代は変わり、最近は口腔ケアをすることで、全身的な健康と密接に関係しているというデータも数多く出されてきました。
自費ですがメンテナンスをやっている歯科医院も増えました
その結果、歯科医院でご自分の口腔状態を定期的にチェックしてもらい、それだけではなくついでにクリーニングもしてもらいたい、といわれる、メンテナンスを重視する一般の方も増えてこられました。健診はあくまで健診で、診るだけでなにもしないのです。したがってついでにクリーニングとか汚れとり、ではなく、全く別の日に行うという流れとなります。
そうはいっても忙しいんだから何回も足を運ぶの面倒だと考えているあなたには当院ではクリーニングだけに特化して1回で最初から最後まで口の中の汚れ落としに専念する時間をとって徹底的に隅々まできれいにしてもらえるコースがあります。
ホワイトエッセンスのオーラルスパクリーニングコースがそれです。当然自費扱いとなりますが、予約されればいつでも回数や間隔を気になさらずにお受けになれます。汚れている量が多いと思われる方には、さらにお時間を取ったUFB(ウルトラファインバブル)クリーニングもあります。
歯石、プラーク、バイオフィルムと呼ばれる歯の隙間のぬるぬるした汚れなどをいろいろな器具を駆使して、歯科衛生士の中でもさらにトレーニングされた認定セラピストだけがご提供できる心地よいクリーニングです。
一度自費でのレベル感の違うクリーニングをお受けになると、健康保険で治療していた時のクリーニングは何だったんだろうと思われるでしょう。
見えない病気の進行を止められる
さらにこれを続けることで、知らないうちに進行してしまう自分では取れていなかった隅々の歯垢、バイオフィルムなどのせいで歯周病が進行してしまうのを予防できますし、口臭もなくせてさわやかな毎日が過ごせます。
自治体で推進している毎年の無料成人歯科健診を受けて、何でもなかったら自費でクリーニング、この流れを一生お続けになるのがこれからのうまい歯科診療所の使い方だと思います。
歯の治療は、一般的な内科治療などと少し違いがあります。それは「同じ箇所の治療でも、やり方がたくさんある」ということ。例えば、1つの虫歯を治すだけでも「治療方法」「使う材料」「制作方法」がたくさんあります。選択を誤ると、思わぬ苦労や想像していなかった悩みを抱えてしまうことも、少なくありません。
当院では、みなさまに安心と満足の生活を得て頂くことを目標に、皆様の立場に立った治療を心がけています。お気軽にお越し下さい。