インプラントはどうしても歯と歯の間に隙間が大きくできてしまう
インプラントは歯のない部分に手術で人工歯根を骨に埋入、骨と癒着後に上部構造をかぶせるという人工的な補綴物ですが、そもそもすべてのインプラント形状は細い円柱状です。(図1)
インプラント体が円柱状(シリンダー状)の形状しかない。なので、そこにあるべき本来の歯根の形よりは当然一回りほど小さく細くなるのが通常です。それでも本来の歯の形を再現するために、上のほうは末広がりに歯の実態が作られている構造となります。(図2)
そのために、いかんともしがたい問題が一つ起こります。
ブラックトライアングル
図3は通常の歯がある場合の歯と歯の間のブラックトライアングルとよばれる隙間(赤く塗りつぶしてある部分)の模式図です。通常はそれほど大きくはないのですが、インプラントの場合(図4)では、どうしてもその部分は絞り込まれるような形態でおおきくなってしまいます。
無理に小さくしようとすると、上部構造が歯肉に接する部分がかなり増えて逆にとても清掃性が悪くなり、プラーク停滞により細菌による炎症を起こしやすくなるリスクが増えてきます。
プラークコントロールが重要
このようなブラックトライアングル(図3,4の赤い部分)は歯間ブラシやタフト、デンタルフロスなどの専用の清掃機具をうまく使ってプラークコントロールを毎日しっかりとしていただくことが必要となってきます。インプラントとインプラント、インプラントと歯肉の間の清掃性を維持することで、そのインプラントの寿命を延ばすこととなります。
歯と歯の間の清掃の重要性は特にインプラントだけに限ったことではないのですが、結構面倒くさいという人のために、エアロフロスと呼ばれる強い空気銃のような仕組みの清掃機具がフィリップス社から発売されていますのでこうした口腔ケア用の機器を使うのもいいでしょう。
よく物がここにはさまりやすいからもっと寸胴なかたちにしてほしいという要望が寄せられますが、そうすることで清掃性がもっと悪くなる危険があり、一般的には推奨はできません。
また、もしインプラント周囲炎になってしまった場合には徹底した清掃と漢方薬が主体で配合されているインプラケアというジェル状の軟膏(歯科医院専売)などを使っても状態改善ができます。
歯の治療は、一般的な内科治療などと少し違いがあります。それは「同じ箇所の治療でも、やり方がたくさんある」ということ。例えば、1つの虫歯を治すだけでも「治療方法」「使う材料」「制作方法」がたくさんあります。選択を誤ると、思わぬ苦労や想像していなかった悩みを抱えてしまうことも、少なくありません。
当院では、みなさまに安心と満足の生活を得て頂くことを目標に、皆様の立場に立った治療を心がけています。お気軽にお越し下さい。