日常生活に潜む気になる問題、それは口臭です。自分や他人の口臭が気になった経験はありますか?口臭はただの個人的な悩みではなく、人間関係にも影響をもたらすことがあります。だからこそ、今回は口臭の原因と、それを予防・改善するための具体的な方法を紐解いていきます。清々しい息を保つ秘訣を一緒に学んでいきましょう。
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- 1.1 なぜ口臭は自分で気を付ける必要があるのか
- 1.2 においの本態は何か
- 1.3 口臭の成分は何か
- 1.4 真正口臭と仮性口臭
- 1.5 臭い真正口臭 の判定はどうやるのか
- 1.6 口臭の原因物質の正体は
- 1.7 歯周病以外が原因の口臭
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1.8
原因から考える3つの最強口臭予防法と対策
- 1.8.1 一つ目は、舌を含めた口腔清掃です。
- 1.8.2 二つ目は 唾液の流れと質をよくすることです。
- 1.8.3 三つ目は、おそらく皆さんが一番気になる秘訣だと思います。口臭抑制効果のある成分を有効に使うことです。
- 1.8.4 口臭抑制成分に必要とされる条件
- 1.8.5 口臭抑制効果の高い成分と具体的な製品例
- 1.8.6 1.塩化亜鉛
- 1.8.7 2,クロルフィル・クロルフィリン(Chlorophyllin)
- 1.8.8 3.ポリフェノール化合物
- 1.8.9 4.種々の植物抽出エキスやエッセンシャルオイル
- 1.8.10 5.種々の殺菌剤
- 1.8.11 6.重曹(炭酸水素ナトリウム)
- 1.8.12 7.オゾン水・オゾンジェル
- 1.8.13 8.プロバイオティクスタブレット
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私たちの五感の中では、嗅覚が最も強く記憶に残ると言われています。
それは、嗅覚の情報だけが鼻の嗅細胞から大脳辺縁系と呼ばれる脳に直接伝えられるからなんです。
視覚・聴覚・触角・味覚の情報は大脳皮質にいったん回り道をして大脳辺縁系に伝えられています。
だから脳に直接届くにおいの印象は,口臭を含めて相手にも強く残るのでしょう。
あなた自身が気になる口臭や、他人の口臭に対して、どうすれば効果的かつ持続的に爽やかな息を保つことができるのか、今回はその秘訣をお伝えします。
なぜ口臭は自分で気を付ける必要があるのか
毎日人と会う場面で相手の口臭が気になった時、あなたならどうしますか?
伝え方次第では人間関係に微妙な変化をもたらすこともある口臭の問題。
どうすれば相手を傷つけずに気づかせる方法があるのかも考える必要がありますよね。
かつて大ヒットした昔の映画で、クリントイーストウッド主演の、刑事ものの映画「ターティーハリー」シリーズの第3作目、ダーティーハリーⅢにはそんな場面がありました。
物語では、正義感の強い、ハリーキャラハン刑事が、気に入らない上司の理不尽な命令で 「お前の知っている情報を教えろ!」と言われた時に彼はキレて、「あんたの口は臭い・・・」と言い返す場面がえがかれています。
周りにいた同僚は、思わず苦笑い、臭いと言われた上司は分が悪くなりその場を引きさがる・・・といった場面.
上司の理不尽な命令に、立場上対抗しにくい場合、口臭を巧妙に利用して、相手に心理的インパクトを与えたいなら有効かもしれません。
ただ、現実の社会では相手を心理的に攻撃するのは良くないですよね。
何が言いたいかというと、口臭に関しては、他人に誤解なく伝えるのは難しいということです。
人間関係を損ねたくないと思う人たちは、もしあなたに口臭があったとしても誰もあなたにそれを教えてくれないことの方が多い、ということなんです。
「あの人の口は臭い」という経験があれば、今度その人に会う時は少し離れて話そうかな、といった行動を無意識にとる人だっているかもしれません。
だからこそ、まずご自分で気づいて気をつけなければいけない問題なわけです。
もしかしてコロナの影響でマスクを余儀なくさせられた結果、少しご自分の口臭に気づかれた方、少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
前半の動画では、歯科医院で行っているあなたの口臭の客観的な判定方法や、口臭の原因物質についてお伝えします。
後半では、エビデンスに基づいた確実に効果のでる3つの口臭予防法をご紹介します。
においの本態は何か
そもそもにおいには、色の3原色のような普遍的なにおいのもととなる、原質 を示すものはありません。
すっぱいにおいとか、甘いにおいとか漠然とした表現で、しかもメロンのようなにおいといった具体的なもののたとえでしか表現しないでしょう。
においは、におい物質が放出する化学分子によって生じます。
人間の鼻は数百種類の嗅覚受容体を持っていて、それぞれが異なる化学分子に反応します。
実際、においの種類は、40万種類あると言われています。
ものすごく大雑把に分けると、いい匂いと悪い臭いとなりますが、「におい」という漢字も使い分けられていますよね。
今回は口臭を扱うので、多くの人が悪い臭いと感じるにおいがまず何なのかを知る必要があるでしょう。
口臭の成分は何か
ヒトのはく息の成分は低級脂肪酸、揮発性窒素化合物、揮発性硫黄化合物の3つに大きく分類されます。
- 低級脂肪酸は口腔内の細菌が有機物を分解する過程でつくりだされた代謝物で、酢酸、プロピオン酸、酪酸などが含まれています。
- 揮発性窒素化合物にはタンパク質が分解されてできるアンモニアが含まれています。
- 揮発性硫黄化合物(VSC)には
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- 腐った卵のにおいのする硫化水素H₂S
- 腐ったキャベツのにおいのするメチルメルカプタンCH₂SH
- 生ごみのにおいのするジメチルサルファイド(CH₃)₂S
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の3つの成分です。
このVSCが最も口臭の原因となるくさいにおいの成分と言われています。
真正口臭と仮性口臭
口臭というにおいの判定は、多分に感覚的な側面が強いです。
臭いからと言っても、例えば、くさやの干物ってとんでもないにおいがしますが、食べればおいしいです。納豆だってそうですよね。
つまり人がくさいと感じる臭いは、その人の文化や過去の経験によって大きく変わるからなんです。
とはいへ、電車で隣に座っているだけで、やはり臭いな、と感じるレベルだと周りに迷惑ですよね。
実際そのように明らかな口臭を有する症例を真正口臭症といいます。
ここで注目すべきは、口臭の強い人に限ってご自分の口の臭さに気づいていない人が多い、というデータがあることです。
ですので今この動画を気になってご覧いただいているあなた自身の口臭は、実はあまり気にしなくていいレベルなのかもしれません。
人は生きているので、生理的にある程度の口臭はだれでもあります。
そういった口臭は仮性口臭症といって問題となる口臭ではなく、日中でも体調でも変動し、心配なレベルではなく基本的には治療対象ではありません。
臭い真正口臭 の判定はどうやるのか
歯科で行う口臭検査は、口臭が心配な方に対して、客観的な評価としての機械検査と歯科医師が直接かぐ官能検査の2つを行います。
官能検査では、0から4までの5段階で評価し、2以上の中等度で悪臭と容易に判定できる の結果は口臭ありとみなされます。
現状、コロナ禍で、ヒトの吐く息を直接歯科医師が嗅いで判定するという官能検査は、呼気の中にもウィルスが混在する可能性があり、リスクが伴う行為でもあるので、最近では機械判定にゆだねることが多くなっています。
機械判定と言っても、ネットや家電量販店で入手可能な数千円の簡易検査機器は実は精度にばらつきがあるため注意が必要です。
歯磨した直後でも歯磨き粉の成分で反応してしまい、実際は臭くないのに口臭ありと判定が出ることもよくあるからです。
しかも口臭のガスの種類までは特定できないので正確な口臭の判定が難しいこともあります。
歯科診療所でよく使われるのは、ガスクロマトグラフィーによる方法でオーラルクロマという機械です。
先ほどのVSC三種類のガスが呼気の中にどれくらいの割合でどれくらい出ているかを判定できるようになっています。気になる方は口臭検査で測ってもらえます。
口臭の原因物質の正体は
実は、VSCを発生させる原因のほとんどは、歯周病の原因となる細菌が分泌する物質なんです。
口の中に存在する細菌が酵素を分泌し、これらのガスを生成しているのです。
特に嫌気性細菌が持つタンパク質分解酵素によって、タンパク質が分解されるとアンモニア、硫化水素、酢酸メチルメルカプタンなどが発生します。
その中でも歯周病菌の親玉として知られる「PG菌」は、口の中のムチンも分解してVSCを発生させます。
したがって、口臭の主な原因は、歯周病菌によるもので、程度の差こそあれ歯周病の人が発する口臭がほとんどを占めるということになります。
歯周病は自覚症状が出ていない人も含めると日本人の大人の8割がかかっているので、たまに口臭を感じる人が多いのが現状だと思われます。
歯周病では、VSCの中でも硫化水素が最も多く発生し、主な産生部位は舌の背後の3分の2ほどの部分といわれています。
日本歯科大学の八重垣教授などの研究者による研究報告書では、VSCは青酸ガスに似た毒性を持ち、致死性のガスだとさえいっています。
また、一連の歯周病原性物質を活性化させて、歯周病をさらに悪化させるだけでなく、発がん性も有していると報告されています。
口臭が他人に迷惑とか言っている場合ではなくて、自分の体にも悪いのだということです
歯周病以外が原因の口臭
まれに、歯周病以外の要因によって引き起こされる口臭があります。
例えば、糖尿病の人はリンゴや柿が腐ったようなアセトン臭がしますし、肝疾患のある人ではアミン臭と呼ばれる腐った魚のようなにおい、腎疾患のある人はアンモニア臭、トリメチルアミン尿症という遺伝的な代謝異常症の人はやはりアミン臭があります。
また、炭水化物の摂取が不足すると体が脂肪をエネルギー源として分解して、その過程でケトン体が生成されるのでケトン臭となってあらわれます。
よく炭水化物ダイエットや断食をしているかたに起こる口臭がそれで、リンゴの腐った甘酸っぱいにおいに例えられます。
さてここから後半で予防法についてお伝えしていきます。
ここでの口臭対策は、歯周病が原因の口臭の予防法となります。ほとんどの方がこれからお伝えする3つのやり方だけで確実に口臭をなくせます。
もしこの予防法をすべて試しても口臭がまだ気になる場合には、耳鼻科あるいは内科で別の病気の可能性を疑ってさらに検査してもらうのが良いでしょう。
原因から考える3つの最強口臭予防法と対策
一つ目は、舌を含めた口腔清掃です。
口の中のくさい原因となる古いプラークを減らすために、歯、歯周ポケット、舌の表面についたバイオフィルムを機械的にこすり取り残しのない状態に保つことです。
歯磨きは毎日してるから当然大丈夫と思われているあなた、それでは本当に汚れがとりきれているかどうか、次の方法でまずチェックしてみてください。
まず上下左右の大臼歯部にデンタルフロスを通しそのフロスのにおいをかいでみてください。
もしフロスのにおいがする方は、実はあなたの口の中には、古いプラークがたくさん残されている場所があるという証拠です。
古いプラークの中のPG菌が腐敗臭を出しているからです。
前回の歯周病についての動画でもお話ししたように、古いプラークには歯周病菌の親玉と呼ばれているPG菌が住み着いています。
そもそも口の中に、くさいにおいのする場所があれば当たり前ですがそれは口臭お原因になります。
機械的にこすりとって、歯の隅っこの取り残しの古いプラークを徹底的になくすところからまず始めてください。
臭い場所を放置しらままガムを噛んだりタブレットでごまかしても一時しのぎで持続しません。
しっかりとした歯の磨き方とフロスのやり方のコツはすでに過去の別の動画で詳しく解説していますので是非ご覧いただければと思います。
歯の周り全周がきれいになったら、次に舌をきれいにします。
舌の表面には細かいひだがあるので、小さな汚れがたまりやすく、舌についている汚れを舌苔と言って、これも口臭の大きな原因となっています。
実は舌苔が口臭の原因となる臭いガスの約60%を占めていると言うデータもあります。
舌の清掃方法はまだご紹介していなかったので、ここでは舌の清掃方法を簡単にご紹介します。
舌ベラや舌ブラシを使って、舌の後方3分の1の中央部を2〜3回清掃します。
多くの製品がありますが、ブラシ系の方が汚れを取る効果が高いとのデータがあり、さらに音波ブラシを使った専用の舌ブラシだとより効果的との報告もあります。
分開溝と呼ばれるくぼみを中心に舌ブラシを当てて数回奥から手前に向かって引き上げるようにこするだけです。
強くこすると表面を傷つけてしまうので優しくなぜる様に数回奥から引き揚げて動かしていきます。
二つ目は 唾液の流れと質をよくすることです。
口臭のない環境を維持していくためには唾液の存在が欠かせません。
流れている清流がきれいで、よどんだドブ川がにおうように、仕事中でも口の中の唾液を舌を使ってたまに循環させ、停滞させないようにします。
舌をおさるさん運動で動かしてお口のなか全体に新鮮な唾液がたえず循環するようにします。
唾液出にくい時は、顎の下あたりを指で少しおすと、じわーっと出てきます。
また、唾液の質をよくするためには、体内の菌バランスを整える工夫が大切です。
腸内細菌を安定させるために繊維質や納豆、キムチ、漬物などの発酵食品、乳酸菌やビタミンB1を多く含む食品をとりましょう。
ちなみに、ビタミンB1の多く含まれている食品には 例えば豚肉、ウナギ、グリーンピース、小麦の胚芽などがあります。
三つ目は、おそらく皆さんが一番気になる秘訣だと思います。口臭抑制効果のある成分を有効に使うことです。
毎日の歯ブラシで完全に汚れがとれていないせいで、口臭が出てしまっている人が圧倒的に多いのだと思います。
だから補助的に有効性の高いもので補いたいな、という人結構多いと思います。
そうしたニーズがあるせいなんでしょうね。洗口剤、歯磨剤、タブレットなどさまざまな種類の商品が出回っています。
実は市販されている洗口剤や歯磨剤には口臭の臨床実験に対して法的強制力がないため、臨床データの公表が少ないという点も問題なんです。
そのため、実際の臨床実験が行われないまま口臭抑制予防効果があるとして市販されている場合が多いのが現状だからなんです。
口臭抑制成分に必要とされる条件
口腔ケア製品を使って、速攻で口臭が消えればひとまず重宝しますが、においがまたすぐに湧いて出てくれば効果は持続しにくいでしょう。
ですから持続した口臭抑制効果を得るには、湧いて出てくる臭いを作り出しているもともなくす必要があります。
そのにおいのもとは細菌なので、細菌を抑制する抗菌作用が必要とされるというわけです。
つまり口臭抑制剤にはにおいを消す消臭効果と細菌を抑制する抗菌効果の両方があってはじめて即効性と持続性が生まれ、すぐれた口臭抑制剤が出来上がります。
口臭抑制成分は、口臭を減らす作用機序の違いで大きく3つに分けられます
- 細菌の餌となる口腔内タンパク質類を吸着してくさいVSCであるメチルメルカブタンそのものを捕捉して口臭をなくしてしまう直接作用による成分です。臭いものにはまずふたをする成分です。もう一つは
- そもそも口臭を作り出す口腔内細菌の増殖抑制をして口臭のもとを減らそうとする間接作用による成分です。
- 口臭を作りにくくする口腔内の善玉菌を積極的に取り込むこんで口の中全体の菌バランスをよくしてそもそも唾液の環境を安定的に整える成分
そこで、市販の製品を判断される際に、本当に効果があるのか判断する際に、その有効性がすでに検証確認されている成分をまずあなたに知っておいただきたいんです。
買いたいと思った製品に消臭成分がはいっているかな、抗菌成分は入っているかなと判断してほしいわけです。
口臭抑制効果の高い成分と具体的な製品例
成分によっては消臭作用だけのモノ、抗菌作用だけのモノ、その両方兼ね備えたものなど様々なんです。
商品を買う際に、その箱の裏に小さく書かれている成分表示を必ず読んでください。
これからお伝えする有効性の高い成分がその中に確認できれば、とりあえず一定の口臭抑
制効果は期待できると判断していいと思います。
学会でもエビデンスが報告されていて、すでに効果が認められている成分だけを中心に、いくつかの例を挙げていきます。
概要欄そのエビデンスとなる論文を載せておきます。
あとで効果がある口臭抑制剤の成分が何だったか、思い出したいときに是非参照してみてください。
1.塩化亜鉛
塩化亜鉛は、口臭の主な原因であるVSCと直接結合し、その歯や細菌のタンパク質分解酵素を阻害して直接口臭を抑制します。クエン酸亜鉛、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛も同様の効果を示します。古くから塩化亜鉛の口臭抑制作用に関する論文は報告されています。
○○亜鉛という成分が入っていれば口臭抑制効果ありと覚えておいてください。とても強力な口臭抑制作用のある成分です。
参考までに塩化亜鉛を含む代表的な製品は、
- (ワーナーランバート社)からだされている薬用リステリン®トータルコントロールがあります。有名な洗口剤ですよね。リステリンのなかでもいろいろな種類がありますが、塩化亜鉛を含んでいるのはこのトータルコントロールというタイプだけです。
- (ビーブランドメディコデンタル)のハイザックRスプレー・ハイザックRリンスがあります。口臭の気になるときにその場で噴霧して使えるようなアトマイザータイプのもあり、やはり塩化亜鉛がふくまれています。
塩化亜鉛製剤の口臭抑制効果は強力ですが、塩化亜鉛含有洗口液の使用を継続すると耐性菌が出てくるのかを調べた実験報告があります。
それによれば4週間を越えた連続使用で一部の菌が耐性を獲得します。その場合、また使用を一時停止して4週間ほどでもとの細菌叢に戻ることなどが明らかになったという実験結果を日大歯学部と福岡歯科大学での共同研究で報告しています。
ですので、さほど口臭を強く感じないなら塩化亜鉛の入った製品は普段からの常用はしない方が良く、むしろ気になるときにトピックにお使いになると非常に効果的と考えておいてください。
2,クロルフィル・クロルフィリン(Chlorophyllin)
クロルフィルは自然に存在する植物の色素いわゆる葉緑素で、クロルフィリンはそれを基にした半合成の化合物なんです。
クロルフィルは、口臭の原因となる細菌の増殖を抑制する効果と口臭を引き起こす揮発性硫黄化合物と結合する能力があることがわかっています。
ちなみに、クロルフィルの多い食べ物はその成分の多い順に、ほうれん草・小松菜・にら・春菊・パセリ・しそ・ブロッコリー・わかめ・ピーマンとなっています。食べるだけで口臭抑制効果があるのは安心でいいですよね。
口臭抑制効果のある飲み薬としては、エーザイ製薬から出ているサクロフィール錠があります。VSC産生を阻害する働きがある銅クロルフィリンナトリウムを含んでいます。この薬は2日酔いの時のにおいにも効くようです。
銅クロルフィリンの口臭抑制効果は東京歯科大学の論文で検証されています。
3.ポリフェノール化合物
ポリフェノールは、植物に豊富に含まれる化学物質の一種で、多くの植物はこれを自分たちで作り出すことで、自然界から身を守り、昆虫や動物を遠ざけるのに役立っています。
ポリフェノールはたくさんの種類がありますがここでは口臭抑制効果の高い3つのポリフェノールご紹介します。
一つ目は茶カテキンです
緑茶に含まれるカテキンは、口内の細菌の増殖を抑制し、口臭を減少させる効果が多数論文にて報告されています。
特に、エピガロカテキンガレート(EGCG)というカテキン類は強い抗菌作用を持つと言われています。
また、茶カテキンの成分のポリフェノールはタンパク質と結合する性質もあるので口の中に残っている口臭の原因となるタンパク質も除去してくれます。
茶カテキンがタンパク質と結合することで、これらのタンパク質やアミノ酸が口臭の原因となるバクテリアによって分解されるのを一部抑制するので、結果的に口臭抑制につながっています。
大学の研究論文は古くからたくさんあり、日大の保存学教室の論文や日本歯科大学の保存学教室などの論文で検証されています。
例えばウーロン茶とかプーアールチャなどいろいろあるお茶の中でも茶カテキンの量が最も多く含まれているお茶は日本の緑茶で、緑茶の中でも抹茶のカテキン量が一番多く、次に玉露、煎茶の順となっています。
なお、粉にしたものが一番高濃度ですので口臭抑制のために 抹茶の粉をなめるという方法は多分やっている人いないと思いますが効果はあると思います。
但し、カテキンというのは、先ほどお話ししたタンパク凝固作用があるため、胃に多く入れた場合、消化が悪いということにもつながるので、とりすぎないようにということは覚えておいてください。
実は茶エキスを含むマウスウォッシュは、市場でものすごくたくさん発売されています。
化学物質でないにもかかわらず、消臭効果と抗菌効果の両方を持っている安全な性質からだと思われます。
使い方は口に含んで数十秒よくぶくぶくうがいをして吐き出せばよいという簡単なものです。
口の中に残っている汚れが固まって、きたない塊となって吐き出したあとで確認できるようです。
自分の歯磨きだけではまだこんなにとれてなかったところがあるんだ・・・というのを強調されてその気にさせられます。口臭抑制剤 とかでヒットさせれば山の様に出てきます。
この動画は口臭抑制剤のどれが持続的口臭抑制効果No1かを発表する番組ではないので、茶カテキンが入っている製品を選ばれる際には、味や値段に折り合いのつくものをお使いになればよいのではないでしょうか。
歯ブラシ得意でないので、口臭抑制効果がしっかりとしていて補助的に常用できるいい口腔ケアグッズはないかな、と考えている方には、個人的にはこの茶カテキン成分の入った洗口剤は安全なので毎日歯磨きと一緒に常用したい人にはお勧めです。
2つ目のポリフェノールは柿タンニン・柿ペルシモンタンニン があります。
柿に含まれるポリフェノールには、硫黄化合物を中和する効果があり、これが口臭の原因となる物質を直接減少させるとされています。
福岡歯科大学の先生方が検証し、柿の果実から抽出した液にトレハロースを加えた「パンシルPS-M®」という消臭剤が静菌作用と消臭作用があると報告されています。
口臭抑制剤としてだされている製品の一例では、
・DHCから出ている柿渋エチケット ・笑顔のゼロシュー(㈱えがお) タブレット錠剤で1日2粒服用します
3つ目のポリフェノールはクローブ(丁子)のユージノール(オイゲノール)
クローブは熱帯地方の常緑樹で、ユージノールはこのつぼみからとられた天然のオイルです。
丁子はもともと食品や香辛料にも使われています。
ユージノールは、口の内に存在する有害なバクテリアに対する抗菌作用を持っていて、バクテリアの増殖や、バクテリアが生成する口臭の原因となる物質の生成が抑制されます。
歯科材料でもセメントなどに使われていて、多くの歯磨剤や胃薬の成分などにも入ってます。
チョウジのはいっている胃薬にはライオンのスクラートS があります。
洗口剤では、エコルオーラケアフレッシュという製品があります。この製品には先ほどの茶カテキンも、柿タンニンも含まれています
4.種々の植物抽出エキスやエッセンシャルオイル
植物抽出物のメチルメルカブタンに対する消臭作用というライオンの研究所が出した1984年の研究論文があります。
ものすごくたくさんの植物の消臭作用を実験的に調べた非常に貴重な論文です。
口臭成分の消臭率で in vitroだけの比較ですが、消臭効果の強いとされている成分の銅クロロフィリンナトリウム(SCC)が消臭効果93%だそうですが、 それよりも高い消臭力を持つ植物エキスとして、この論文では6つほどとり挙げています。
いずれも消臭率で90%以上のものでシソ科のセージ95%、タイム99%、ローズマリー97% マメ科のスオウ100%、もくれん科のホオノキ99%、ナス科のクコ98%などです。
ちなみにセージ、タイム、ローズマリーには魚臭抑制作用が高いことで知られていて、料理のスパイスなどでもよく使われているようですよね。
クコってあの杏仁豆腐などの上に赤くちょっとだけ乗っているやつです。
スオウはあまり聞きなれないですがサンフラワーオイルの原料となっているようです。
こうした自然からのものだけの成分だけで特化している口臭抑制剤は、逆にそれを売りにしているものが多いです。
製品の一例として売られている、サンタマルシェタンクリーニングジェル はスイカズラ花エキス、茶葉エキス、セージ葉エキス、ローズマリーエキス、など、ほとんどが99%天然由来成分で構成されています。
化学物質系に過敏な方にはお勧めだと思います。
消臭効果の高い植物は他にもかなりたくさんあります。
どんな植物がどれくらいの消臭効果があるのか興味がある方は確認してみてください。
但し、この論文でのデータは あくまでinvitroでのデータです。
エッセンシャルオイルとしては、レモングラス精油は一番抗菌効果が高く、次いでペパーミント精油、ゼラニウムブルボン製油、レモンユーカリ精油、ティートリー精油の順となっています。 ここでは鶴見大学歯学部の研究論文を載せておきます。
さらに、マスティック、ユーカリ葉抽出液は天然成分からとられたものですが、ともに抗菌効果があります。
マスティックは嫌気性グラム陰性菌に効果があります。マスティックのエキスの入った歯磨き粉は結構数が多く、ドラッグストアやネットでも多数販売されています。一方、ユーカリは歯周病原性細菌の増殖を抑制する効果があるとされています。
ユーカリの入っている製品の一例としては、ロッテから出ているキシリトールオーラテクトガムにはユーカリ抽出液の成分が入っています。舌苔の量を減らし口臭抑制効果も研究で確認されています。
パックスナチュロンという製品はセージエキス、茶葉エキス、ユーカリエキス、などが入っている天然成分だけの洗口液です。l、ン
5.種々の殺菌剤
歯周病の浮遊菌表層菌にきくクロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンゼトニウム(BTC)、塩化ベンザルコニウム(BKC)、歯周病のバイオフィルム内に作用するイソプロピルメチルフェノール(IPMP)、チモール、トリクロサン(TC)などがあります。
代表的な製品として
- WeltecのコンクールF洗口液にはクロルヘキシジングルコン酸塩
- バトラーのリキッドジェル・モンダミンハビットプロ にはCPC
- ライオンのシステマデンタルリンスにはIPMP
がはいっています
塩化セチルピリジニウム含有トローチでは塩野義から販売しているローズウィンド 常盤薬品から出ているプロテクトドロップがあります。
この両者ともに2014年に出された、口臭除去を効能とする口腔咽喉薬の臨床的評価 という論文において優れた口臭抑制効果が認められています。
6.重曹(炭酸水素ナトリウム)
スーパーなどでも身近に手に入る重曹ですが、実はこれが結構あなどれない性質を持っています。
2020年に出された神奈川歯科大学歯学部大学院から出された論文や2023年に兵庫医科大学医学部糖尿病内分泌免疫内科からだされた論文によれば重曹には抗酸化能・抗菌作用があります。
すでにお話しした中で、唾液の働きは口臭抑制にとても有効だということをお伝えしたと思います。
唾液にはもともと唾液緩衝能という口腔内のPhを整えてくれる大切な作用があるんです。
口腔内が汚れてプラーク中の細菌が酸をつくりだすと、唾液のPhと緩衝能は低く酸性になります。
それにより虫歯・歯周病、口臭の危険が高まることになります。
シェーグレン症候群の方やドライマウスと言った唾液の出の悪い方、ご高齢で服用している薬剤が多数あるとその薬剤の副作用で唾液の出が悪くなる方が多いんです。
介護の現場でもそういった方が多数いらっしゃいますよね。
そんな場合に1%の重曹水でうがい洗口をしてもらうことで、気軽にPh上昇が期待でき、結果的に口臭の予防につながるというものです。
重曹は口腔内で緩衝作用を発揮して、口臭の原因となる揮発性硫黄化合物の不揮発化による口臭抑制効果がうまれます。
粘液溶解作用もあり舌苔の除去にも有効とされていて、重曹うがい後のすっきり感も高いです。
食品に使われているくらいですので仮に間違って誤飲しても安全です。
作り方は簡単で500mlのペットボトルに水道水とスーパーやドラッグストアで買ってきた食品用の重曹を小さじ一杯約5グラム加えて溶かしただけの洗口剤です。
作り置きできます、私も試してみましたが変な味はしません。
但し掃除や洗濯用など工業用ではない食用に売られている重曹で作ってください。
1日3回くらいを限度に適宜口に含んで30秒くらいぶくぶくうがいでお使いになれば介護の現場でもお使いになれ、簡単に口臭抑制効果が持続します。
7.オゾン水・オゾンジェル
オゾン (O3)は、殺菌作用が強力で瞬時に作用が発現し、環境汚染の心配もなく、安全面でも優れています。
院内感染対策や手指消毒に有効なので当院でもオゾン生成機器は導入しています。
直接このオゾン水でうがいをしていただいたり、歯磨きをしていただくだけで強力な口臭抑制効果が生まれます。
但し最大の欠点は、半減期が約30分と非常に短く、殺菌効果の持続性がないことです。
生成してすぐに使わなければ、ただの水になってしまうから製品化しにくかったんです。
その後2004年昭和大学で、オゾン化ジェル・クリームが開発されました。
このオゾンジェル・クリームは、オゾンを高濃度に維持し、約6ヶ月間持続性の抗菌力をもちます。
これを製品化された高級化粧水は既に市場に出ていますが、口腔内用としての販売はまだ少ないようです。
アレルギーの心配が全くなく、どなたにも安心なために今後さらに多くのものが登場すると思われます。
非常に有望な口臭抑制剤としての製品となるでしょう。
これにかかわる昭和大学歯学部以外の論文では、大阪歯科大学で最近のものを掲載しておきます。
製品の一例ですが、 グッドブレスラボから出ているGoodbreath Jelがあります。少し高いですが、アトマイザータイプで持ち歩けてどこでも使えます。
8.プロバイオティクスタブレット
腸内細菌のバランスを改善し、健康に有益な作用をもたらす生きた善玉菌の事をプロバイオティクスと呼びます。
このプロバイオティクスを含むタブレットは、口腔内の細菌バランスも改善し、長時間本質的に口臭を抑制する効果があります。
今までご紹介してきたすべての口臭抑制手段は、機械的な歯ブラシを化学的な殺菌作用と抗菌作用を持つ成分を補助的に使って、とにかく取り除く事をメインで口臭をおさえようとする考え方でした。
しかし、抗菌物質を毎日使うと悪玉細菌と同時に善玉菌まで殺してしまいます。
それならば、日常的に善玉菌を多くしておけば菌バランスが整うので、口腔内環境がそもそも汚れにくくなり、簡単な歯磨きだけでも汚れが取りやすくなるということになります。
口臭抑制効果としての即効性こそないとは言え、長期的に安定した本質的な口臭抑制となるコンセプトを持った新しい考え方だと思います。
但し、プロバイオティクスタブレットをなめていれば歯磨きはいらないという話ではなく、プラークそのものが取れやすい状態となるので、臭いの強い古いプラーク自体が口の中から減るので、結果的に口臭抑制効果も生まれるというものです。
ここでは2社ほど製品の紹介をします。ともに違った善玉菌を取り上げていますが、それぞれしっかりとしたエビデンスで証明されています。
具体的な製品としては
「プレミアモード㈱からのZendaman pro バニラ味」
ニュージーランドのオタゴ大学で発見された特別な口腔善玉菌です。
2%の人にしかいない、もともと口腔内の健康が保たれやすい人には、ストレプトコッカスサリバリウスK12株とM18株がいるという事実がわかり、その細菌の分離に成功しました。
この2種類の善玉菌をとることで、悪玉菌が増えすぎないように菌バランスが保てる口腔内の環境を整えてくれるというものです。
この善玉菌はほとんどの人は体でたくさん作り出すことが難しいために、毎日お休み前にK12株とM18株の生菌の入ったタブレットをゆっくりと口腔内で溶かして補充するというとり方が有効だとのことです。
徹底した口腔清掃が不得意でフロスはどうしても苦手だといったように、機械的に歯や歯の間の汚れをすべて取ることが上手くできないという方、磨いているのにいつも磨き残しがありそうな方には特におすすめかもしれません。
そもそもバイオフィルムで汚れやすい口腔内環境を、夜タブレットをなめるだけで、汚れにくい環境にかえてくれて口臭抑制効果が自然と生まれます。
面白いのは、ペットの口臭が気になる方向けに、ペット用も販売されています。
ご自分のペットの口臭が気になる方は一緒に試す価値ありそうですね。
特に動物の場合は毎日歯磨きする習慣もないので、食べさせるだけでプラークが付きにくくなり口臭抑制するならいいですよね。
ライオンから出されているSystema歯科用オーラルヘルスタブレット90粒
1グラムに3億個の生きた乳酸菌【TI2711(ティー・アイ・2711)】を凝縮した、口内環境にアプローチするタブレットです。プロバイオティクスの発想から生まれたオーラルヘルスタブレットです。
口臭が気になった際にあなたにまずやってほしいのは、すぐに口臭ケアグッズを買いに行くことではなく、口の中の歯と歯茎、舌ベロの汚れも含めてまず可及的にとりのぞき唾液を口の中で循環させるといったあたりまえの原因除去のところからまずおこなってみてください。
そしてそれを補うために口臭ケアグッズを選ぶ際には、先にお話ししたエビデンスの確認された成分が入っている製品か否かを確かめていただいたうえで、チョイスしていただけるといいでしょう。
また長期的に安定した状態を保つためには、体全体の菌バランスを整えておくことは絶対重要で、そのために必要な食品、善玉菌などの摂取も有効だということがお分かりいただけたと思います。
歯の治療は、一般的な内科治療などと少し違いがあります。それは「同じ箇所の治療でも、やり方がたくさんある」ということ。例えば、1つの虫歯を治すだけでも「治療方法」「使う材料」「制作方法」がたくさんあります。選択を誤ると、思わぬ苦労や想像していなかった悩みを抱えてしまうことも、少なくありません。
当院では、みなさまに安心と満足の生活を得て頂くことを目標に、皆様の立場に立った治療を心がけています。お気軽にお越し下さい。