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コロナ禍は忘れられない時期になりました、それは歯科疾患という観点でもそうでした。

久しぶりにお越しになった再初診の患者さんも多くいらっしゃいます。その中で、明らかにここ最近増えてきた3つの歯科疾患があります。

それは…

  • 虫歯が見えないのに何となく歯がしみる
  • 歯茎が腫れることがある
  • 顎が痛い

もちろんこれらの3つの症状は以前からあった歯科疾患です。ところが明らかにここ最近増えてきたのを実感しています。

現状、非常事態宣言で外出制限や自粛の影響で皆さんはどうしても自宅に一人でこもりっきりになる場面が多くなっているでしょう。

そんな状況下にいるとき、皆さんのお口の中では何が起きているのか。今回はそんな内容です。

増えている歯科疾患1:歯と歯の間の隠れ虫歯

歯がしみる原因の一つは虫歯です。虫歯菌の出す酸によって歯が溶けてしまうためです。虫歯はよく見える噛む面だけでなく、歯と歯の間にもできます。歯と歯の間の隠れ虫歯「コンタクトカリエス」が急増しています。

何となくしみる、という症状だけで、歯の表面からは直接見えないため、本人にも気づきにくい虫歯です。

しかし、ある程度以上大きくなれば、レントゲンを撮れば確認できます。

 

レントゲン写真で見る「隠れ虫歯」

例えば、実際のレントゲンをご覧になって、この方のどこが虫歯かおわかりになりますか?実はこの方のコンタクト虫歯は、全部で7か所もあります。

ご本人は、何となくしみるだけで、虫歯がそんなにたくさんあるとは思っていなかったそうです。

実は、赤丸で囲んだ黒く抜けている部分がすべてコンタクト虫歯なのです。

歯と歯の間が虫歯になっていて、自分では見えない隠れ虫歯なのです。本来、歯の表面は硬い組織ですから、レントゲン上では白っぽく見えるはずです。それが黒く映るということは、そこが虫歯で溶けて柔らかい組織になってしまっているということです。

だらだら飲みやだらだら食いをしていませんか?

リモートワークで、ついつい何かを飲みながら、つまみながら、といったことが続いていませんか?

歯と歯の間の虫歯は、だらだら飲みやだらだら食いをしている方ほど発生しやすくなります。

その理由は、食べ物や飲み物が口の中に停滞している時間が長いほど、口腔内のpHが酸性に傾いている時間も長くなるからです。

マスク着用で口の筋肉を使わないと、唾液循環が悪くなります

また、外出先ではほとんどマスクをしたままのことが多いでしょう。マスクをしていないときに比べると、口を開けたり閉めたりする口輪筋を使う量が圧倒的に減っています。

その結果、口腔内の唾液の循環も悪くなっている可能性が高いのです。唾液は本来、口腔内の環境の掃除役であり、適正なpHを保つのにもとても重要な役割を担っています。

なお、そうした実際の虫歯ではなく、しみるという現象もあります。それは知覚過敏といいます。こちらは外力によって引き起こされる歯の過敏症状で、虫歯ではありません。

歯の表面はエナメル質という固い組織の結晶体によって保護されています。歯ぎしりや、強く歯が当たるかみ合わせが繰り返されることで、歯のエナメル質表面の結晶体が長期的にはがれてくる現象です。

構造的に薄い歯茎に近い部分から冷たいものがしみやすくなる現象です。

これは虫歯ではないので、理由は後述します。

増えている歯科疾患2:歯茎の腫れ

2つ目の増えている現象は「歯茎が腫れる」です。

歯周病と診断された方には、定期的な歯のクリーニングが必須です。しかし、症状がさほど出ないからといって1年以上放置すると、ほとんどの方は歯周病がワンランク悪い方へ進んでしまいます。

以前、日本経済新聞で、東大病院の中川恵一准教授が、コロナ禍でのがん検診率の低下に警鐘を鳴らしていた記事がありました。

がん検診の受診率がコロナ禍の影響で減ったせいで、本来見つけられるはずの初期がんの発見率が下がっているということです。歯周病もそれと全く同じで、皆さんが知らず知らずのうちに悪い方向へステージが進行しやすい歯科疾患なのです。

歯周病が「沈黙の病」と言われる所以です。

コロナ禍が怖いので、それまで定期的な歯周病の管理で問題なく通院されていた方が、通院できずに何か月も経過してしまった、という方、かなり要注意です。

歯科疾患の状態がコロナウイルスに影響する

歯周病で歯茎に病気がある方は、コロナウイルスの温床となりやすいです。皆さんご存じのように、コロナウイルスは口腔内や鼻腔から感染します。

歯周病の方は、歯と歯茎の周りに軽い炎症があります。その炎症はウイルスの侵入場所となります。つまり、口の中でウイルスが定着しやすいほど、増殖もしやすくなります。コロナウイルスが口腔内に入っても、体内で増殖しやすい環境があるかないか。そこで、結果は明らかに変わります。

鶴見大学の花田信弘教授は、歯科からの情報発信が重要だと力説されています。日本歯科医師会もウェブページでこの事実を提唱しています。コロナ対策に口腔ケアが有効であるとアナウンスしています。

http://www.nsigr.or.jp/coronavirus.html

日ごろからの口腔ケアは、現時点でエビデンスのある、簡単に誰でもできるコロナ対策の一つと言えるでしょう。世界中でコロナ陽性者と口腔清掃状態や歯周病の重症度との相関関係のデータを集めて解析すれば、興味深い知見が得られるかもしれません。

歯科疾患予防とコロナ対策に有効な成分が国から公式に発表されています

昨年の6月に、経済産業省ではすでに殺菌剤CPC(塩化セチルピリジニウム)配合の製剤が新型コロナウイルスを99.9%不活化するというデータを公表しています。

さらに、BTC(塩化ベンゼトニウム)とBKC(塩化ベンザルコニウム)の2つの成分もコロナ対策に有効であることをWebページ上で挙げていました。

新型コロナウイルスの感染拡大に対応し、家庭や職場におけるアルコール以外の消毒方法の選択肢を増やすため、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)は、経済産業省の要請に応じ、消毒方法の有効性評価を実施しています。(4月15日ニュースリリース)

昨日5月28日、有識者による検討委員会(第4回)が開催され、塩化ベンゼトニウム(0.05%以上)、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(0.01%以上)について、新型コロナウイルスに対して有効と判断されました。

これにより、有効と判断された界面活性剤は次の7種となりました。

  • 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.1%以上)
  • アルキルグリコシド(0.1%以上)
  • アルキルアミンオキシド(0.05%以上)
  • 塩化ベンザルコニウム(0.05%以上)
  • 塩化ベンゼトニウム(0.05%以上)【5月28日追加】
  • 塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(0.01%以上)【5月28日追加】
  • ポリオキシエチレンアルキルエーテル(0.2%以上)

新型コロナウイルスに有効な界面活性剤を公表します
https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200529005/20200529005.html

新型コロナに有効な成分を含んでいる洗口剤(歯磨き粉など)は?

これらはコロナ禍以前から、歯周病菌対策用として市販の洗口剤の中にはすでに上述の成分が配合されているものは販売されております。

一例として

  • サンスターから出されている GUM という製品名でCPC+BKC配合の洗口剤
  • ライオンから出されている クリニカ という製品名でCPC+BTC配合の洗口剤

これらは有名なのですでにご存じの方も多いでしょう。

歯周病対策だけでなく、コロナ対策にも有効だということが明らかなら、毎日の口腔ケアの仕上げとしてだけでなく一家すべての方が、みんなでこれらの洗口剤を使わない手はないですよね。

増えている歯科疾患3:顎が痛い

歯が欠ける現象や顎が痛くなる現象、これらの主要な原因に、異常な咬合力によってひき起される外力があります。先に挙げた知覚過敏の原因にもなります。

もちろん、もともとの歯並びが悪い場合もありますが、嚙み合わせに問題なさそうな方でもおきるのです。

無意識に溜まったストレスを発散しようとして…

外力とは、何を隠そう歯ぎしりや強いかみしめなどの無意識化下で起こる現象です。

自覚がほとんどない方のほうがむしろ多いのが特徴です。

夜間だけではなく、日中、無意識に歯と歯を合わせてしまう現象もそのうちの一つです。

その時にたまった咀嚼筋が疲労を回復しようと、夜間の無意識の歯ぎしりや食いしばりとなって、顎をよからぬ方向に強い力で動かす現象を引き起こす可能性もあります。

日中、自分に押し寄せるストレスを無意識に押し殺しながら、体の組織は働かされています。

何があっても黙って働いてくれる心臓。黙って我慢している自分の閉塞感のある感情。黙って食いしばりやかみしめに使われる咀嚼筋や口腔器官。

そうなれば、誰だって、どんな組織だって、たまには息抜きしたり反発したりしたくなるものです。

マスクによる耳への持続的な負担も

マスクをずっとかけ続けていることへの耳への持続的な負担もあります。

この持続的な負担の力はその周辺筋肉への、持続的な頭蓋ユニットへ弱い力であっても悪影響を及ぼしている、と疑うオステオパシー専門医もいます。

頭蓋は骨のパーツで構成されています。それぞれの骨は隣接する骨との間の縫合あるいは軟骨性結合によって関節を形成し、お互いに動的に関連し合っています。

 

ある骨の動きは隣接する骨に伝達され、それがさらに次の骨へと伝達され、全体として動的なシステムを形成しています。

体全体をいじるオステオパシーの頭蓋に特化した分野をクラニオパシーと呼んでいます。

本人の気づかないうちに頭頚部からの疲労ストレスをため込んでいる可能性は十分あるでしょう。

それに加えて何よりも仲間と会って騒げませんし、飲みながら愚痴や意見を口を開けて言えません。

加えてマスクを強要される毎日が続きます。無意識のうちに、もしかしたら皆さんも少しづつストレスを抱えているのかもしれませんね。

もともと一人で過ごすことになれている人でも、一日中マスクをつけっぱなしの通勤電車の中で、いつうつされるかわからない環境下で、ストレス感じない方がおかしいかもしれません。

ストレスマネジメントは咀嚼器官でも行われている

実はストレスや感情を発散させる器官の一つに咀嚼器官があることはご存じですか?ゴリラやサルなどが警戒して威嚇するときに、牙をむき、そして歯を食いしばります。

そうすることで、感情を他に伝えようとしているのです。

元ウィーン大学のスラヴィチェック教授や、元神奈川歯科大学の佐藤教授は、咀嚼器官でのストレスマネジメントを研究していました。

皆さんも、集中しているとき、知らずに歯を食いしばったりしますよね。舌を押し付けたり、はさんだりして集中する方もいます。

それらの日常の癖は、知らずに咀嚼筋を疲れさせます。(この現象をTCH(Tooth Contacting Habit)と呼び、学会で発表されている先生もいます)

https://kinoins.com/

食事以外に歯を使うことは、現代社会ではめったにありません。しかし、思わぬ外力が働くと、顎や歯をだめにする可能性があります。

ストレスの反動で夜間の歯ぎしりが増えれば、なおさらリスクとなります

歯がしみるという知覚過敏の原因の一つに、こうしたストレスによる歯への過負荷があります。これが原因となることは、よくあります。

物事の現象の背景には、必ず原因があります原因が複数のストレスで、しかも間接的に何らかの作用を及ぼしているものだとすれば、その一つ一つを知ったうえで、少しでも減らすべく対応していく心掛けが必要といえます。

以上いろいろと書いてきましたが、歯科疾患の予防にも、新型コロナ対策にも両方に非常に有効となる可能性の高い4つの行動を次にまとめました。

歯科医師としておすすめできる、歯科疾患対策に有効な4つの行動

1.だらだら食いやだらだら飲みをしない

口内環境を整え、テレワークでも、だらだら食いやだらだら飲みやつまみ食いなどをしない。

いつも口に物が停滞しているとPHが下がりっぱなしで酸性になり、虫歯ができやすくなります。歯科疾患にかかりやすくなります。

また歯ブラシの時にはデンタルフロスも必ず使いましょう。

2.適度に体を動かし、リラックスタイムを作る

長時間固まった姿勢でデスクワークをせずに、一定時間経ったら適度なリラックスタイムを必ず取り、体をこまめに動かしましょう。休む際にはスマホの画面などは絶対に見ないで、リラックスしてストレスをため込まない、深呼吸、瞑想やヨガなどは効果的です。

3.気づいた時に舌と口周りの筋肉をストレッチ

口の周りの筋肉の疲労回復のために、

  • 気づいたときに何回か舌を口の中で1回転させる、おさるさん運動
  • アッカンベーなどをして舌先をぐっと伸ばすストレッチ運動として有名な、あ い う べ 体操
  • ほっぺたをふくらます口輪筋の運動

などを気づいた時にやってみましょう。

そうすることで唾液の出がよくなり、自浄作用が働き口内PHが上がり、虫歯への耐性がつきます。また口輪筋、舌骨下筋群のストレスを解放してやることができるのです。

4.定期的な歯のクリーニング

定期的な歯のクリーニングは、歯周病が中等度以上の方に絶対必要です。また、免疫機能が低下してきた中高年の方にも必要です。

症状が出た時点では、歯周病はすでにワンランク悪化しています。歯茎の調子が悪いから、そろそろクリーニングに行こうかな、では遅いのです。

何ともなくても、定期的にクリーニングすることが、本当の予防クリーニングなのです。コロナウィルスの増殖場所として、汚れた口腔内ほどリスキーだと認識してください。そうなる前の習慣、それが歯科衛生士さんによる定期的な歯のクリーニングなのです。

クリーニング頻度はその方の歯肉の健康状態でみな違いますそして、毎日のブラッシングの仕上げには、殺菌剤、BTC塩化ベンゼトニウムやCPC塩化セチルピリジニウムなどの成分が入っている洗口剤を併用しましょう。

コロナ対策にもなり一石二鳥です。ガラガラうがいでもお使いになれ、有効でしょう。

また、当院では歯科疾患・歯科情報を様々に発信していますのでぜひご覧下さい。

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